ささやかだけれど、面白いこと

面白いと思ったものの感想と考察と妄想とエモを置いときます

漫画家の松本千秋さんが天才過ぎる

「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた」を読みました。

 

天才でいらっしゃる!!

作者の松本千秋先生、今さら知りました。

この漫画はドラマ化もしていたそうで。

 

38歳バツイチ女性がティ○ダーでマッチしまくって若い男の子と会いまくって楽しく過ごすという···エッセイのようです。この方はモテるんやなぁ~と感心すると共に初対面の相手と毎回コミュニケーションとって面白いものを相手に見いだしていけるその柔軟な感性がすごいなぁと感心しました。

 

めちゃくちゃ面白すぎる。

この方自身が自分を俯瞰して客観的に見るのが性分なのか、すごいイケメンモデルさんとマッチしても緊張したり盛り上がったりしてる自分の内面を冷静に眺める視線も持ち合わせていて惚れ惚れしつつもイケメンへの突っ込みもできてて、賢い方なんだろうなぁ。すごいおもしろい。

 

人間関係のささやかな軋轢、わざわざ言葉にするほど重大なことではないけどとても嫌なもの、みたいなものを表現できてて天才過ぎる。読み手に伝わるように、さらっとそつなく表現しているように見えて、玄人そのものの演出で高すぎる解像度で描いていて、読んでて面白いと共に、すごいきつい。

 

あとこの漫画の絵はジブリっぽくて、グロい内容と合ってなくて面白い。

 

ただ、誰にでもおすすめできる漫画ではない。

漫画を読んでる合間にこの作者さんの人間性がチラチラとめくれて見えてくるような感じがするんだけど、その見えてくる姿が私の嫌いなタイプの女の描き方過ぎてめちゃくちゃしんどい。

私は幼い頃から女の子大好きで大抵の女の子は好きになれるんだけど、たまに性格だけ苦手なタイプがいてそれが「他者に自分の幸せを委ねて、それが思うようにいかなくなったら相手を責めるタイプ」ようするに、「人生詰んだらとりま結婚しとけば良いじゃん」とか「結婚相手のステータスが自分の価値」とかの思想の方々、自分の人生を自分の責任ですすむことを放棄している(ように勝手に私が感じてるだけなんだろうけど)人が苦手なんです。

この方は必ずしもそうじゃないとは思うんだけど、何か相手に任せすぎていて自分で決断しない行動が多くてもどかしくなることが多かった。

まぁ、私自身が性欲強くて自分から相手を押し倒す鼻息荒いタイプだからな···「ガンガンやりゃいいやん、あ、この人自身は別にやりたくないのか···」ってなってた。私だったら基本的に体調不良の時以外ならいつでも、チャンスがあればやっときたいから···私がモテないからこう思うのかしら、いや、そうなんでしょうね(涙)モテる人は受け身でいれば人が寄ってくるから、待ってれば釣れるんだよね。でもさ、ほっといた釣りざおで勝手に釣れた雑魚より、自分から海に飛び込んで捕ったウニのがおいしいやん?(ガチでウニとると密漁になるけども)

何事も自分で何かを選んだって感覚が大事と思うんよね···

と、ここで話を戻して。

この主人公、おそらく完全に本人というわけではなく、漫画の中で描いているキャラクターとして成立させていると思う。こんな面白い漫画を書く賢い方が、この漫画に描かれているほど単純な人物なわけがないからな。もっとぶ厚い思索で押し潰されそうなほど色々感じて色々考えていると思う。

 

あと、ご友人が亡くなられたというエピソードが途中で出てくるが、その描き方、自分を悪人に見せようとわざと露悪的に書いてる。

もっともっとたくさん心のなかに色々な想いがあるなかで、読者に自分を「善い人」に思われそうなエピソードをわざわざ省いてると思われる。

漫画の面白さを優先してそうしてるんだろうからめちゃくちゃにすごい。プロ魂。

 

でもお話の端々に、とてつもない嫌悪感を感じる。たぶん、ある程度わざとだ。主人公への批判的な視線は、書いてる作者にもある。極力それを省いて見えないようにしてるおつもりでしょうが。

あなたはあなたに批判的ですよね。と痛ましく思ってしまう。

 

もっとご自身の好きなように、もっともっと好きなようにしてほしいな。

添い寝だけがほしいなら添い寝だけでいいし、泊めたから、泊めてもらったからって相手とのセックスは拒んでいいし、もっと、もっと自分のやりたいようにやったら良いのに。

若い男の子たちを傷つけたっていいし、自分が傷ついたってことを素直に相手に言ったらいい。

自分の傷をなんでもないふりして眺めてないで、しっかりと治療してあげたら良い。

自分を一番大事にすることを、堂々と、良いわけもせずに、してほしいなぁ、なんて思いました。

 

自分と価値観が合わないような合うような、自分が違う育ち方をしていたらこの方のような価値観で生きていただろうなという、無い話でしかない共感を得ました。

 

面白い漫画でした。同じ松本千秋さんの「トーキョーカモフラージュアワー」も大天才できつくて面白い。こっちは短編ドラマを漫画で読んでる感じ。

 

恋話してる女子同士とか恋愛とか男女の関係とかセックスとか以外の人間関係を描くときはどんな風に書くのかなって気になって、もっといろんなタイプの漫画を読みたいなって感じさせるそつなく面白い漫画を書けてしまう天才、それが松本千秋先生の印象です。